今年読んだ本を振り返る 2024
早いもので、今年も年の瀬。皆さん、年末いかがお過ごしでしょうか。
いきなりですが、読書歴って人の性格とマイブームを如実に写し出すものだと思うんですね。というわけで、年末というキリのいい時期に、今年読んだ本を振り返って見ようと思います。
「ああ、年初はこんなこと考えてたなぁ」
「こんな本読んでたっけ!?」
思い出にふける自分用の記事になってます。
去年末、國分 功一郎先生の「暇と退屈の倫理学」を読んでから哲学にハマってました。その流れを汲んで2024年一発目の本は哲学書。「暇と退屈の倫理学」の中でニーチェに触れ、彼がカッコいいと思いニーチェ入門書を購入…みたいな理由だったと思います。
数年前、飲茶先生の著書「史上最強の哲学入門」を読み、"とにかく分かりやすいなー!"と思ったのは覚えてます。哲学の入門書といえば飲茶先生です。
この「ニーチェ入門」も、著者と一般人の対話形式なので凄く分かりやすいです。哲学書によくある難しい言い回しはないですし、ページ数も少ないので一般人でも読みやすい本になってます。
入門書なんですが、その内容はグッと来るものになってます。特に、コスパ・タイパを求める現代人にとって、「永劫回帰」という考え方はとても刺さると思います。私も、この本を読んでから「今」を意識するようになりました。
哲学に興味があるけど難しそう…と思ってる方にはオススメの一冊です。
「ニーチェ入門」を読んだあと、哲学書をもっと読みたいと思い手に取った一冊。國分先生の人生相談のメルマガ連載を本にまとめたものになってます。
飲茶先生と比べると多少大人向けの整った文章になっていて、これまたチョー読みやすい。
相談内容は多種多様で、正直私が「しょうもねぇ」と思ってしまう相談もありました。しかし、國分先生は相談内容の言外にある真意を読もうとする能力に長けていて、本の中で展開される推論にはハッとさせられました。本の帯に「人生相談においてはとりわけ、言われていないことこそが重要である」とありますが、それが本のメインテーマになってます。
ただ、相談者が本当に先生の推論と同じ考えを持ってるのかは分からないので、相談者の反応が知りたいところです。
哲学の考え方をどう人生に応用するか。それに対するヒントがこの本に多く点在してます。
「哲学の先生と人生の話をしよう」では参考書が複数紹介されているんですが、そのなかでも私の注目を一番引いたのはこの本でした。なんと、AV監督が書いた恋愛書だと言うのです。その著者の名は"二村ヒトシ"。
ちょうど同じタイミングで「コテンラジオ」というポッドキャストの「性の歴史」編を聴いて、その時に二村先生がゲスト出演してたんですね。
「哲学の先生と人生の話をしよう」と「コテンラジオ」。偶然にも2つの媒体が二村先生を推していて、「読むしかない!」と思ったのがこの一冊です。
肝心の内容なんですが、これは一般的な恋愛ハウツー本ではありません。自己啓発本です。倫理的・心理学的なお話です。「自分」について見つめ直し、自分の願望や性格を分析し、治すべきところは努力する。恋愛とは"身だしなみ"や"ナンパテク"などペラペラなその場しのぎで上手く慣れるものではなく、地道な努力の結晶であると気付かされる本。
自分の中に「スーパー戦隊」がいて、その中の「モモレンジャー」(自分の中の女の子)を大事に使用というお話はとても面白いと思いました。女性の扱いに長けてる人って、モモレンジャーが強い人なんだなぁ…と。
あと、挿絵がエッチです。
なぜあなたは「愛してくれない人」を好きになるのか (文庫ぎんが堂)
「すべてはモテるためである」が男用なら、この本は女用の本です。これもまた心理学的なお話ですね。
「心の穴」という誰もが抱えるトラウマみたいなもの。それを埋めてくれそうな人に恋をする。穴をうまく埋める人に依存してズブズブになる。そうならないよう、まずは「自己受容」して心の穴を受け入れよう…
「自分」を愛する大切さを教えてくれる本ですね。二村先生の本が自分を見つめ直すきっかけになっていると感じてます。
二村さんの本を読んだあと、哲学に戻りました。手に取ったのは木田元先生の「わたしの哲学入門」。
簡単な哲学入門書だろうと思って手に取ったこの一冊。実際は想像していた本とはちょっと違い、冒頭では木田先生が哲学に触れた理由が書かれていたり。主要な西洋哲学が省かれていたり。哲学をざっと網羅する入門書ではありません。木田先生が人生を通じて勉強した哲学の入門、だと感じました。
「ハイデガーが読めるようになりたい」から必死に勉強して、外国語を覚えて、自分で翻訳する…努力の量がすごいし、好奇心旺盛な方だなぁと感服しました。私にはマジで無理。
アリストテレスを源流とした西洋哲学の流れと、それによってもたらされた西洋文化のアンチテーゼである「反哲学」についても紹介されてます。ニーチェやハイデガー目線の哲学史が書かれてるので、哲学についてある程度知識がある方は手にとってみると新しい目線で哲学が学べるんじゃないかな、と思います。
戻ってきました、國分先生!
この「目的への抵抗」は、「暇と退屈の倫理学」後に行われた講話を収録してる本になります。コロナ危機以後の話も書かれてる最近の本です。講話形式なので読みやすいです。
前半は、コロナ危機で生活が制限された社会についての話でした。イタリアの哲学者であるアガンベン氏が、コロナ禍での移動や集まりの制限に対する批判を取り上げてます。いくら生存がかかっているからと言って、市民が易々と権利を放棄していいのか。行政権力の言うことに素直に従っていては、民主主義はどうなるのか。命ばかり優先して、病院での面会や死者の葬儀も禁止するのは、死者の権利への冒涜では?生存第一の現代社会から一歩引いた見方を紹介してます。
後半では「目的」と「手段」をテーマにした話になってます。「暇と退屈の倫理学」で出た「贅沢」「遊び」「浪費vs消費」の延長にある話ですね。なんでもかんでも未来への投資のために行うのではなく、「今」を楽しむことが大事だと、この本を読んで改めて思いました。
来るべき民主主義 小平市都道328号線と近代政治哲学の諸問題
「目的への抵抗」にて行政権力の強さについて書いてあったのと、未来の民主主義が気になったから手に取った本です。もともと、代表制民主主義の非効率や市民の声が政治に反映されてない現実は感じてました。
この本では、従来の民主主義の限界を提示してます。物事の決定権は行政に集中してること・市民は行政の決定プロセスにほとんど参加できないこと(知事選ぐらい)・市民の声は立法権、しかも代議士を選ぶ工程でしか届かないこと。
これらのポイントを、都道建設時のイザコザエピソードとともに紹介してます。
やっぱり従来の民主主義は非効率だと思ってます。
最後はこの一冊。「未来の民主主義」の流れを汲んでこの本を手に取りました。
2015年出版のちょっと古い本ですが、今でも十分通用すると思います。テーマは、「ルソーの一般意思を現代版にアレンジしよう」というもの。
「来るべき民主主義」…で書き出された従来の民主主義の問題に対して、テクノロジーを活用して改善しよう、という本です。具体的には、参加型民主主義の提案がなされてます。
代表制民主主義がキライと言いましたが、強いていいところをあげるとすれば、市民がそれぞれの生活に集中できることだと思うんですね。古代ギリシャが行ってた熟議型民主主義は、市民一人ひとりが政治に深く向き合わなければならない。時間も労力もたくさんかかります。
皆忙しい世の中、より手軽に政治に参加できないか…というのがこの本の醍醐味ですね。そこにテクノロジーが使われるわけです。例えば、ニコ生のコメント機能を政治に使う…みたいな。
市民一人ひとりの声を汲むのではなく、社会全体の「空気」みたいなものを可視化して政治に使う。その斬新さに感心した一冊です。